斜視・弱視について
・弱視とは強い遠視・乱視が原因で、正しいピントで物を見ていない状態のことをいいます。
遠視とは遠くも近くも見にくい状態、近視は遠くだけ見にくい状態、乱視は一定方向だけ見にくい状態になっていることをいいます。生まれたときは、強い遠視の状態ですが、成長に伴い遠視が落ち着いてきます。ただし何かしらの原因で、取り残されてしまうことがあります。しかし子供は大人の何倍もピントを合わせる力をもっているため、視力も1.0以上出ることもあります。視力を出すために、過剰に調節してピントを合わせるため、目が内に寄ってしまう(内斜視)・目を細めて見るなどのしぐさをします。弱視は出来るだけ早くに発見・適切な治療を行わないと、生涯視力が出ない状態になってしまいます。
・斜視とは一方の目が常に、もしくは一時的に異なった方向を向いている状態のことをいいます。
視線がずれている方向で外斜視、内斜視、上下斜視に分類されます。原因は生まれつき・弱視などさまざまです。集中している時は正常な状態だが、力を抜いている状態は異なった方向へ向いている状態を間欠性斜視といいます。この場合は視力も立体視も良好なケースが多いです。しかし常に異なった方向へ向いている状態・恒常性斜視は、視力・立体視が弱いなどの状態になっています。このような場合は早めの対処を必要とします。放置しておくと弱視につながってしまう可能性もあります。
弱視の検査と治療の流れ
1視機能の検査(屈折検査・斜視検査・両眼視検査)
屈折検査(遠視・近視・乱視)・斜視検査(眼の動き・向き)・両眼視検査(立体視)などの検査を、お子さんの年齢や症状に合わせて検査をします。
※初めての検査で上手に出来ない場合や集中力が途切れてしまい検査が難しい時は、日を改めて検査すること場合があります。
検査の結果が出た後、医師の診察があります。
医師の診察にて精密な検査が必要と判断された場合、視能訓練士が検査を進めていきます。
目薬(アトロピン・サイプレジン)を使用した精密屈折検査は次回のご予約をお取りいただき、別日に検査をさせていただきます。
また、メガネ作成希望でご来院のお子さんも、検査の結果によっては、精密検査を行ってからのメガネ作成をお願いする場合がありますので予めご了承ください。
2精密屈折検査~目薬(サイプレジン・アトロピン)の検査~
「精密屈折検査とは?」
物を見ようとする時、目の中の筋肉が緊張し、水晶体を厚くすることでピントを合わせます。
お子さんの場合、大人よりピントを合わせる力が何倍もあるため、余分な調節が入ってしまい、通常の視力検査では正確な度数を導くことができません。強い遠視・近視・乱視の状態が隠れている可能性があります。
そのため、筋肉の調節を休ませる目薬を使用して、調節がかからない状態で視力・精密検査を行います。
当院では、サイプレジンもしくはアトロピンという目薬を用いて検査をします。サイプレジンよりアトロピンの目薬の方が調節を止める力が強く、眩しい・ピントが合いにくい時間も長くなります。
当院では、お子さんの屈折度数・視力・斜視の状態を確認した上で、サイプレジンかアトロピンのどちらかを選択します。
「サイプレジン検査の流れ」
この目薬はお子さんの目の調節力を約1~2日ほど取り除く(見にくくなる)ため、お子さんの生活に合わせて予約制で検査をさせていただきます。
予約日にご来院していただき、サイプレジンを5分おきに3回点眼します。1時間後に屈折(遠視・近視・乱視の度数)・斜視角(プリズムでの測定)を行います。
「サイプレジン検査の注意点」
・黒目(瞳孔)が大きくなるため、光がまぶしく感じます。
・全体的にボヤけて(特に近く)見えます。
このような症状は点眼後、約1~2日間(※個人差あり)で元に戻ります。
「サイプレジン検査でよくある質問」
Q1.サイプレジン検査後は、普段の生活が出来ますか?
A.普段の生活は出来ます。しかし、光がまぶしく見える・全体的にボヤける(特に近く)などの症状が続くため、運動・勉強などは考慮が必要です。行う場合には十分注意してください。
Q2.サイプレジン検査は、痛みはありませんか?
A.痛みはありませんが、点眼時に一時的に刺激感(しみる)などの症状があります。検査スタッフやご家族の方で励まし合いながら点眼していきます。
Q3.サイプレジン検査は、どの位時間がかかりますか?
A.点眼後1時間位お待ちいただき、検査を進めていきます。検査までの待ち時間は、院内のキッズスペースをご利用していただきお待ちいただけます。また外出も可能ですので、必ず受付スタッフにお声かけください。その日の混み具合により前後しますが、約1時間30分~2時間程かかります。
Q4.サイプレジン検査後は、必ずメガネを作りますか?
A.必ずではありません。検査の結果と医師の診断の元、メガネが必要と判断された場合のみ作成します。メガネ練習が必要な場合は別の日に予約の上、改めて処方します。
Q5.サイプレジン検査は、定期的にするのですか?
A.お子さんの視力・斜視などの状態に合わせて、医師が検査期間を決めていきます。特にメガネを作成した場合は、定期的な通院での経過をみながら決めていきます。
「アトロピン検査の流れ」
この目薬はお子さんの目の調節力を約10日ほど取り除く(見にくくなる)ため、お子さんの生活に合わせて予約制で検査をさせていただきます。点眼をお渡し・説明をする日、検査をする日の2日間の予約を取らせていただきます。
最初の予約日にアトロピン点眼薬を処方します。副作用など注意点がありますので、保護者の方に視能訓練士が説明します。点眼のスケジュール表もお渡ししますので、ご自宅でご両親がお子さんに次回予約日の7日前から点眼を開始していただきます。次回予約日に屈折(遠視・近視・乱視の度数)・斜視角(プリズムでの測定)を行います。
3メガネ装用・アイパッチを使用した治療を開始
検査の結果と医師の診察のうえ、メガネが必要と判断された場合は、メガネを装用していきます。
治療の第一歩は正しい屈折度数のメガネを終日装用することです。
お子さんにとってメガネはわずらわしいものであり、慣れるまではストレスも出てくると思います。メガネをすぐに外してしまったり、顔を向きを変えてメガネの隙間からのぞいて見る場合があります。
メガネを正しく装用しないと治療効果が出ません。メガネをかける大切さをお子さんにはもちろん、お父さんお母さんにも説明をして、お子さんとご両親と視能訓練士が一体となって治療をしていきます。
メガネを装用したから終わりではなく、視機能が順調に向上しているかの確認のため、予約にて定期的に受診をしていただきます。
経過観察中、あまり効果が出ていないとき、左右の屈折の差が大きい時はメガネに加えてアイパッチを活用します。
視力の良い眼の方にアイパッチをして、治療中の目のみ活用する方法です。1日何時間行うかは医師・視能訓練士が経過を見て決めていきます。指示通りに行わないと、アイパッチをしている良い方の目の視力が落ちてしまう危険性があります。
お子さまの斜視・弱視を疑うしぐさについて
・このようなしぐさをしていたら要注意
①テレビ・絵本・ゲームなどを見るとき、目を細めて見る・近づいて見る
②横目で見たり、頭を傾けて見るくせがある
③細かい作業に集中力がなく、やる気がない
④片目ずつ隠して物を見ると、どちらかの目の時だけ嫌がる
⑤よく段差につまづいたり、転んでしまうことがある
以上の症状が1つでもお子さんに見られた場合は、強い遠視や乱視・斜視によって、視力が出ていない場合があります。このまま放置してしまうと弱視になる可能性があります。幼少期にメガネ・アイパッチなどを使用して治療を開始すれば、視力の回復が可能ですが、何も治療をしていないと、成人になってからメガネやコンタクトでは視力が出ない状態になってしまいます。気になる点があれば、必ず眼科へ受診してください。
学校健診で、眼科受診をすすめられた方へ
現在の学校での視力検査の結果はA・B・C・Dの4段階による判定になります。
A判定(1.0以上):教室の一番後ろでも黒板の字が問題なく見える。
B判定(0.7~0.9):教室より真ん中より後ろの席だと、黒板の小さい字が見にくいことがある。
C判定(0.4~0.6):教室の真ん中より前の席でも、黒板の小さい文字が見にくい。
D判定(0.3以下):教室の一番前の席でも見にくい。
裸眼視力・矯正視力(メガネ上・コンタクト上)の結果がA以外の場合、学校から用紙が配布されますので用紙を持参のうえ、早めに眼科へ受診をしてください。メガネをお持ちの方は、一緒にメガネも持参してください。
この4段階判定は370(さんななまる)方式といい、学校で検査する視力の方法です。学業への影響がないかどうかを短時間で検査するために、0.3・0.7・1.0の3種類の大きさの視力表を使って視力を検査します。そのため、眼科で検査する視力の方法とは違います。眼科では、より細かくお子さんの様子を見ながら視力検査をします。
実際にはよく見えているけれど、上手に検査が出来なかったため結果がよくなかったケースもあります。
しかし、遠視・近視・乱視の屈折異常によって視力が出にくい場合は、眼科での検査・診察結果で、お子さんにあった治療方針を選択し、生活指導をしていきます。特に遠視や乱視の場合は弱視と言って、将来の視力に大きな影響を及ぼす可能性があるからです。この場合は、早急に対応しないと手遅れになるケースもあるため注意が必要です。
大切な事は、お子さんが見にくさを訴えていなくても用紙を配布された場合は、必ず眼科受診をしましょう。なかには家族の方がお子さんに「見えてる?」「困っていない?」と聞いても、「見えてるから大丈夫」と言われたため、「本人が大丈夫ならいいのでは?」と、眼科に行かない判断をしてしまうケースがあります。
現代では、スマートフォン・タブレット・ゲーム機などの急速な普及により、手が届くところに娯楽や情報を知ることができます。お子さんの中には、遠くが見にくいことをあまり実感していないことがあります。近くのものが見えて楽しめていれば見えていると言ってしまうことも少なくありません。そのため眼科では、学校生活・日常生活で遠くを見るときに困っていないか、見にくいのを我慢していないかをお子さんとの会話や視力検査で確認していきます。
メガネの作成を希望される場合でも、お子さんの眼の状態によって詳しい検査を必要と判断した場合は、別の日にメガネの作成になる場合がありますので、ご協力よろしくお願いします。
その他、お子さんの眼に関する気になることがあればお気軽にご相談ください。
色覚検査をご希望の方へ
2003年から小学校での色覚検査が廃止されていましたが、2014年4月30日、学校保健安全法施行規則の一部改正に伴い、色覚検査の必要性・指導強化が再認識されています。色覚異常は、男子の約5%・女子の約0.2%の割合でみられます。
色によって見分けにくいのが特徴で、全く色が見えないわけではありません。日常生活にはほとんど不自由はありませんので、本人に自覚のない場合が多く、検査を受けるまで保護者の方も気づいていない場合があります。
色覚異常は治療方法はありません。しかし学校生活を送るうえで、進学・就職に際して色の見え方・感じ方を知っておくためにも大切な検査です。
現段階では色覚検査は希望者のみ対象ですが、一度は学校検診・眼科で検査されることをおすすめします。
当院では検査専門の視能訓練士が担当します。予約での検査になりますので、一度お電話にてご相談ください。